新型コロナウイルスの影響で公演が中止になった12の劇団による「萬ムービーフェス」、審査結果を発表します。

アトカル大使賞

豊島区国際文化都市アート・カルチャー特命大使の皆様と、大使代表の城所信英様(豊島区観光協会理事・南大塚ネットワーク相談役)に審査していただきました。

「また、同じ時間と空間に…願いをこめて」

 豊島区アートカルチャー特命大使 幹事 城所信英


 見物人が芝の上に集い、演者の芸を囃し立てながら楽しんだことから「芝居」という語が生まれたように、演劇は人と人とが「同じ時間と同じ空間を共有すること」を前提に、そこに共感と共鳴と連帯(時に反発)が生まれ、成り立ってきた文化です。
 国際アートカルチャー都市を標榜してきた「文化芸術創造都市」豊島区が、コロナの禍の渦中でも、本当に文化の灯を守り通すことができるのでしょうか? 人と人とがつながることが認められず、分断と遠隔を余儀なくされる日々。しかもその異常な日常が「新しい生活様式」だと言い放たれる状況のなかで、果たして劇場という場に未来はあるのでしょうか? まさに苦悶の問いかけが続いています。
 そのようななか、このたび「萬ムービーフェス」を開催しご参加くださいました、劇場・劇団、スタッフ・キャスト、多くの関係者の皆様方に深く厚く感謝を捧げます。
 様々な制約の中で、それぞれに知恵と工夫と趣向を凝らした12作品がエントリーされました。しかしこれらは「芝居の映画化」でも「劇場中継録画」でもありません。この厳しい現実の中で、「映像文化にモタレかかりそうになりながらも、ぎりぎり「演劇」としての発信力を試そうとした、悲壮なまでに真摯で勇敢な演劇人たちの物語だと思います。

 さて、豊島区「アートカルチャー特命大使賞」には、エントリーNo.5 劇団ヨロタミ『サークル』が選ばれました。ベテラン劇団らしいわかりやすい表現が印象的です。コロナ時代の生々しい閉塞感にはあえて触れずに、その遠隔感の虚しさを、若くして死んだかつての仲間との、時代を隔てた死者と生者との心の距離感に置き換えて優しく表現されていたと思います。私事ですが、5月に35年来の親友をコロナで喪いました。おおつか音楽祭などにも出演してくれたことのあるシャンソン歌手でした。もうステージに立てない無念さと、もうステージを観ることのできない悲しさ。
 その感懐の延長になりますが、幕が開かなくなって改めて感じる、劇場・ステージ・ライブという文化の奥深さを、真正面から直球で捉え直そうとした意欲的で実験的な二作品に、個人的には興味を抱かされたことを申し添えておきます。エントリーNo.1 チームまん○『演劇と映像の狭間』と、エントリーNo.9 メリケンギョウル『消人器』です。
 一筋の希望の光や、凍り付くような絶望感を、心の中で交互に交錯させながら、皆様の意欲的な12作品を堪能させていただきました。
 経済を進めるためとはいえ、コロナは共存して楽しい相手ではありません。人類が一刻も早くこれを駆逐したのち、安心して楽しく、また劇場でお目にかかりましょう!
 このたびは誠にありがとうございました。

アトカル大使賞 : 劇団ヨロタミ 『サークル』

劇団ヨロタミには賞金1万円を進呈します。

シネマハウス大塚賞

萬劇場のすぐそばにある映画館「シネマハウス大塚」の館長で映画監督の後藤和夫様に審査していただきました。

どの作品も、芝居を打つことができない状況下で、ムービーによって表現しようという意気込みは感じました。
撮影技術や編集など、普段演劇をやっている人とは思えない手慣れた感じがしました。
それぞれの劇団の多くが「エンタメ」を目指すというように、娯楽を提供しようとしていたとは思います。
映画を作ることは楽しい作業だし、それはどの作品からも感じられました。
本編よりも最後のクレジットタイトルがやりたかったんだなと言う作品も多く見られました。
その意味では皆さん無邪気に映像で遊んでいるなという印象を受けました。
特に編集や音楽の付け方にそれを感じました。押しなべて軽いノリのエンタメ作品だったでしょうか。
それはそれでフェスの趣旨にあっていたと思います。

でも一番楽しんでいるのは、作り手たちと演者たちで、残念ながら観る者の心を揺さぶるような、または震撼させるような強烈なメッセージは聞こえてきませんでした。
萬劇場をロケ場所に使っている作品が多く、地下に向かって階段を降りて行くシーンがいくつもの作品にありました。
演劇は、この地下の狭い空間から生まれるのでしょう。だが、この狭い空間から世界を展望する、人間社会を展望するのが表現活動でしょう。
その意味では映画も演劇の変わらないと思います。映画もまた小さなスクリーンから世界を展望するのです。人間社会を描くのです。
そして何より時代と拮抗するのです。
そこには作り手の強烈な表現欲求があるべきだと私は思っています。

「新型コロナウィルス」のために通常の表現活動ができない。この状況の中から何を描くのか。
演劇にできることは何なのか。この不自由な時代に演劇は有効なのか。この不寛容な世界とどう対峙するのか。
私個人はそういう作品との出会いを期待しました。演劇人から映画人への表現者としてのメッセージを聞きたいとも思いました。
その意味では、残念ながら「シネマハウス大賞」という大仰な賞を選ぶのはいささか酷な要求です。

すいません。私は軽い男ですが、軽いノリは不得意なのです。

シネマハウス大塚賞 : 該当なし

優秀賞

7月15日(水)~8月12日(水)に実施した投票で、最も多くの票を集めたのは次の劇団でした。

優秀賞 : 海賊のように飲む会 『悪い女の-waruihitono-』

海賊のように飲む会には賞金3万円を進呈します。

運営より

募集開始が5月末。撮影期間は約1ヶ月あったものの、各団体が撮影できるのは最長でもわずか2日間。そして7月15日には発表……すなわち、今回は準備・撮影・編集、いずれも使える時間が非常に限られた企画でした。そんな中で、しっかり各団体の持ち味を出してきたなと感心するとともに、短い時間の中で効率よく創作する学びにもなったのではないかなと思っています。

通常、演劇は1ヶ月とかそれ以上(現場によりますが)稽古します。脚本の執筆やキャスティング、宣伝の準備も含めると、企画が動き出してから初日が空けるまでに3ヶ月はかかります。

じっくり時間をかけてでないと生み出せないものもありますが、切羽詰まっていないと生まれないものもあります。今回、通常では考えられないほどすぐ目の前に「応募〆切」があり、「撮影日」があり、「公開日」があったことは、団体にとってかなり良い刺激になったのではないでしょうか。

関係者全員が尽力したことと思いますが、中でも「編集」を担当した方に敬意を表します。あれ大変なんですよね。気が遠くなる。本当にお疲れ様でした。

最後に、城所信英様、後藤和夫様、ご支援・ご投票くださった皆様、この度は誠にありがとうございました!

萬劇場 萬ムービーフェス担当 森山智仁